Parce que c'est comme ça

欧州大学院生。最終目標はバカンスのある人生。パスクセコムサ。

本気を出せば30分で800語書ける。

だからあと10日ある3000語のペーパーなんて楽勝!…とはなりませんね、はい。2週間前に構成だけ考えたきり、他の課題に追われたまま放置しています。なんてこったパンナコッタ。

 

まあそれはともかく、春学期もめでたく終わりが見えてきました。来週が基本的に授業の最後の週で、課題も残り2500wordsのエッセイ(ほとんど書けてる)、3000wordsのペーパー(全然書けてない)、それからTake-home examの3つとなりました。できる気がしてきた!

 

今学期は前学期と比べてグループワークが多くてですね…クラスメイトに迷惑をかけまくりました。てへぺろ。やっぱり何言ってるか全然分かんないし、分かったとしてもうまく自分で話せない。絶対疎まれてるだろうなと思いつつやっていたのですが、直近のプレゼンが諸事情あってとてもバタバタになり、なんとか私も貢献することができました。いやほんとギリギリだった…。私は基本的に英語ができないので、ペーパーにしろプレゼンにしろlast minuteをだいぶ早めに設定していて、個人課題については遅くとも提出の数日前には出来上がるようにしてきました(日本の学生時代のことを考えるとすごい進歩だとは思う)。だけれども今回は、manuscriptを書き上げたのが授業が始まる1時間半前…。今まで800語のmanuscriptを書くのに何日も(へたしたら1週間くらい)かかっていたのですが、いやー本気出せば30分で書けるんだね。普段いかに集中できていないかという話でもありますけれども。ね。結果はたぶんオーライで、教授はえらいご機嫌でした。よかったよかった。

 

実は前学期死ぬほど成績が悪かったのですが、今学期はなかなか健闘している気がします。3つあったプレゼンすべて、excellent/very good/wonderfulとか教授が言ってました。中間課題のグレードも悪くなかった。今学期は全部C以上で揃えたいなあ。Aはなかなか難しいとしても、いくつかBも取れたらよいなと思っています。前学期ですか?ひとつB、ひとつC、DがいくつかとEがひとつでした。死。いやあEとかあるんだなと思いましたよね。まあ、それでも単位は取れているのですが。よっぽどのことがない限り、単位自体は取れるっぽいです。

 

あと少し、これを乗り切ればバカンスです。がんばります。

中間を乗り切った&優しい人たちのはなし

気付けば3月もなかば。こちらに来てから半年が経ちました。早すぎうける。

先週から今週にかけて中間試験&課題の山場でしたが、なんとか今日のプレゼン(これは別に中間というわけではないがドン被りしてしまった)で一息つけました。と言っても早速来週締めの課題とか期末課題の準備そろそろ始めないと、というところではあるのですが。

先学期の中間の時期は、課題の数自体は同じか少ないくらいだったと思うのですが、いやあしんどかったですね。課題を出すという行為自体が初めてで、果たして自分の書くものが理解可能な英語なのかどうかすら分からなかったし、統計の授業はわけ分からんし、統計に限らず授業全般的に聞き取れてなくてほんと辛かったです。

今期は全体的にいつものルーティンで読まなきゃいけないリーディングの量が少ないというアドバンテージも大きく、また1つを除いて結構いい成果物を作れたんじゃないかと思っています。時間は相変わらずかかるけど、精神的にも結構安定していて、ついったでの愚痴吐きがずいぶん少なくて済みました。前期の成績笑えるくらい悪かったんですけど、今期はマシにできるといいなあ。

そして、3月に入って明らかにリスニングが安定してきました。全体として何言ってんのか分からないということが減って、今の一単語だけ知らんかったなとか、ここが聞き取れんかったなと自分で切り分けられるように。一単語だけ分からなくてもだいたい文脈で推測できますしね。各種ポッドキャストなども明らかに内容が把握できるようになってきて、ああ成長したなとほんと感涙ものです。とはいえまだまだ100%理解には程遠いし、グループディスカッションはうまくいかないことのほうが多いのですが。

 

さて、基本的に一人で黙々と過ごすスタイルなわけですが、ここ二週間ほど諸事情により人と連絡する機会がありまして。一人はクラスメイト(会ったことはない)で、秋学期にした私のプレゼンを見て連絡をくれた人です。お母さんが日本の方で、日本の男女格差についてのプレゼンを興味深いと思ってくれたよう。この人がスーパー親切で、懇切丁寧にカバーレターを添削してくれました。大学院入試で出すPersonal statementでも思ったけど、こういう系の書類書くのってほんとしんどいですね…。自己否定の繰り返しなんだもの。案の定最初に見てもらったやつは全然だめで、でもここがだめだったというのと同時に、「最初としては悪くなかった、英語もよかったよ。外国語で人生を語るなんて難しいことはよく分かってる(からあんまり落ち込まないで)」と言ってくれて、不覚にもほろりときてしまいました。

あとは、日本で働いていたときにお世話になった方々。みなさま年単位でご無沙汰で、かつ私の厚かましいお願いに応えていただく義理も特にない方々なのですが、本当にレスポンスが早い&優しくて。たぶん全員数時間以内にお返事をいただけて、応援してるよと一言添えてくださっていました。思い出したら涙が。

話されていることが理解できないというのは日本ではあまり経験してこなかったことで、飲み込みの早さみたいなものが己を支える大きな柱の一つだったので、それができなくなってしまったというのがつらさの根本だったんですよね。同時に、勉強してもできない、授業が理解できないってこういう感覚だったのか、と知りました。すごく傲慢なことを言っている自覚はありますが、正直なところです。だけど、英語世界での自分が全てじゃないと思い出すことができました。確かに英語はできない、議論に満足に参加もできていないけれど、日本では真面目に働いて、それを評価してくれる人はそれなりにいたんです。リスニングもましになってきたことだし、真面目にやっていればきっとうまくいくときがくる、と思えるようになりました。

 

最大の懸案事項はまだ片付いていないし、中間が終わったと思ったらすぐに期末がやってきてしまってあんまりゆっくりできる暇はないけれど、それでも来月の終わりにはほぼほぼ終わっているはず(と思いたい。面接頑張れ、自分)。そしたら待ちに待ったバカンスです!!!いえあ!!!あと一カ月半、頑張ります:)

授業が楽しかった

すごーい。すごい進歩だ。

 

今期、ものすごく幸運なことに、言ってることが9割がた聞き取れる先生に当たりました!楽しい!!授業が分かるってこんなに楽しいんだ!!!なお生徒の発言は(ちょっとはマシとはいえ)相変わらず聞き取れてないので劇的にわたしのリスニングスキルが向上したというよりは単純に相性の問題です。

 

そしてもう一つ、結構悩んで、でも毎回グループワーク(3人)のある授業を取ってみたのですよ。12回の授業で全部同じメンバーだから本当に多大なるご迷惑をおかけすることになってそこはまじで申し訳ないのだけれど、少しだけでもdiscussionらしきものができるのが本当に楽しくて。そうだよ、分からなくても論文読んでるだけでそれなりに楽しかったんだから、授業が分かれば、議論ができればもっと楽しいに決まっているのだ!!

 

かつ、今期は全体的になんだかいい感じがしています。課題の種類はいろいろあって、提出日もうまいことばらけてて、無理!!という感じのするやつは(今のところ)ない。毎週のリーディングもいい量。前期は休める日なんてなかったけど、今期は1日とまではいかなくても半日くらいはまるまる休めるときもありそうです(もっと集中してできればもっと休めるんですけど、まあそれができたら苦労しませんよね)。

いいぞ!英語ができるようになれば完璧だ!

 

ただ、インターンをね、探さないといけないのですよ。来期に向けて。ちなみにまだなんもしてません。というのも、卒業してからなにをしようかというのがいまいち固まり切っていないのです。うーん。やりたい仕事を考えたら日本に帰りたいのだけれど、そういう職場の残念さは一度身をもって体感してるので、やだなあと。あとインタビューを英語で出来る気がしなくてうじうじしているというのも多分にあります。

 

いずれにしろ、まじでこれしか言ってないけど、英語、お前が問題なんだ。

今悩んでるのが、私リスニングはまじでできないんですけど、発音は結構褒められるんですよ(フランス語も同じ)。だけど、授業のzoomだと全然聞き取ってもらえないことが時々あって。文法が崩壊してるというのが一番ありそうではあるのですが、今日はCan you hear me?ですら反応が微妙というか時差があったので、うーん、機器の問題なのだろうか。

 

いずれにしろ(二回目)、楽しくなってきたのはとてもよいことですね。あと単純にやっぱり、春に向かっていくっていうのがいいですよね!課題表作ってても、4月の日付を入れるだけでなんだかテンションが上がります。あったかくなってきたらレストラン、再開できるといいなあ。バイトしたいです。お金をもらえている現状、すごくありがたくはあるのだけれど。

 

という、本当にただの日記でした。

The Testaments 感想

気付いたら1月もあと1週間ですって。Incroyable。Spring semesterがはじまるーいやだーーー

いやね、勉強自体は楽しいのですが、なにがつらいって英語できないのがつらいよ。ずっと言ってる(いや一応、冬休みの間もいろいろして多少マシにはなったのですがね、限界があるよね)。

 

いろいろしたうちの一つに洋書を読む!というのがありまして、Magaret Atwoodの『The Testaments』を読んだわけです。『侍女の物語(The Handmaid's Tale)』と同じ世界線の、少しだけあとの物語。『侍女の物語』は、トランプ大統領の誕生により「もしかしたらありうる未来」として再注目されるようになった気がする(どこかでそんな分析を読んだ)のと、Huluでドラマになったことでかなり有名になった作品です。

すごくどうでもいいのですが、私が『侍女の物語』を読んだのはもう何年も前、『後宮小説』みたいなのが読みたい!と思って図書館をうろついていて、その題名だけで手に取ったのでした(ほら、侍女って後宮にいるじゃないですか)。もちろん読み始めてすぐ見込み違いだったことに気付くのですが、面白くて最後まで読みました。のちに前述のように話題になり、自分の慧眼というか運を嬉しく思ったものです。

というわけで感想です。原書で読んでいるので間違えて意味を取っているところなどあるかもしれません。ネタバレ盛り盛りです。

 

○別々に始まった三者の物語が合流していく気持ちよさ

お話は、Aunt Lydiaの"The Ardua Hall Holograph"、Agnes Jemima(Aunt Victoria)の"Transcript of Witness Testimony 369A"、Daisy(Jade/Nicole)の"Transcript of Witness Testimony 369B"の3つの語りによって進行していきます。最初は同じ時代に生きている人なのかどうかも分かっていませんでした(正直英語を追うことに必死だったのもある)。特にDaisyはGileadではなくカナダに住んでいるので、どう繋がってくるのか全然読めなくて。それが、Gileadに行く!となってからはもう面白くて、ページをめくるのが楽しかったです。

語り手がそれぞれ全く違うバックグラウンドを持っているので使う語彙もかなり違っていて、Aunt Lydiaは論文に出てくるようなかっちりした言葉、Agnesは「おしとやかな」淑女が使うようなもの、Daisyはいわゆるふつうの(?)若者言葉だったように思います。だからね、Daisy篇は簡単な動詞(takeとかgetとかgoとか)+in/out/on/off/over(こういうのなんていうの?助詞?)みたいなのが多くて逆に難しかったよ…。邦訳版だと口調でかなり分かるようになっているらしいので、英語がもっと分かる人が読めばよりそういう印象を受けるのでしょうね。Praise be!(Gileadで女性がやたら使うお返事)

 

○ひとはAunt Lydiaたれるのか

私昔からずっと考えているのですが、もし第二次大戦下のドイツにいたドイツ人だったら、ナチスに反抗できたでしょうか。収監されたユダヤ人だったら、反乱を起こせたでしょうか。日本人だったら、戦争には負けると言えたでしょうか。関東大震災で被災した日本人だったら、朝鮮人を殺せと暴徒化した人を止められたでしょうか。朝鮮人を匿えたでしょうか。Auntの立場は、対女性では支配者であり、対男性では従属者です。ナチ政権下における特権的ユダヤ人(評議会とか、強制収容所で優遇されていた人とか)に一番近いかもしれません。

もちろんAunt Lydiaの責任は大きいです。もう少しうまいやり方があったのかもしれない。だけど、どんな大義のもとであっても、誰もその命を犠牲にすることを他人に強いることはできない。彼女は生き残るために必要なことを選択し続けただけとも言えると思います。そして、結果を見れば、Gilead崩壊の端緒を作ったのは最初のほうにスタジアムで兵士にライフルを向けて蜂の巣にされた女性ではなく、Aunt Lydiaだったわけです。うーん、もしその立場に置かれた全員がその女性のような選択をできていれば、あるいはそのときスタジアムにいた女性全員がそれを見て奮起できていればまた状況は違ったのかもしれませんが、それはやっぱりちょっと難しいよねと。それこそ、ユダヤ人たちが整然と列を作って強制収容所に向かう道のりを歩いたことを思えば。

そう、このGileadシリーズの怖さは、一見荒唐無稽に見える設定でも、一つ一つを見ていけば決してありえないと一笑に付せるようなものではないということなんです。キリスト教との関係はちょっと分かりにくいけれど、女性は家事に向いてるとか、男がするような「複雑な」「高度な」仕事ができるようには作られていないとか、私たちにも刷り込まれてきた概念だなと思います。今はまた変わっていたらいいなと願っていますが、私が中高生の頃にはまだ確かに、女子が生徒会長をやるなんてすごいとか、女子は数学が苦手なものとか、そういう感覚がありました。

話を戻します。だからやっぱり、Aunt Lydiaはすごい人だったと思うのです。Thank Tankでのこの誓いを何十年経っても忘れなかったのだから。→I will get you back for this. I don't care how long it takes or how much shit I have to eat in the meantime, but I will do it. 結局強いのは"I"なのかも、とも同時に思います。もちろん、Dr.Groveへの制裁等にも鑑みるように、(自分で作り上げたとはいえ)女性たちへの抑圧に怒る気持ちもあったのでしょう。でも、「私」が受けた苦しみを絶対に忘れない、絶対に復讐してやるというのが根源的な力の源だったんだろうと思います。

その動機がなんであれ、Aunt Lydiaの功績は大きかった。それが分かっているからこそAgnesとNicoleはその名を記念碑に刻んだのでしょう。しかしBeckaと同じようにではなく、そのイニシャルだけだったというその塩梅が絶妙ですね(ここで解説されていて膝を打った)。。結局AgnesはHandmaidではなかったからAunt Lydiaの罪について寛容であれたということだけかもしれませんが。そう、今回はOfkyle/Crystalが少し出てくるだけで、Handmaidは語らないのですよね。

 

○なぜAunt LydiaはBaby Nicoleが必要だったのか

私的この物語の最大の謎。SourceたるAunt LydiaはGileadを危機に陥れられる情報を渡す条件として、Baby NicoleをGileadに寄越すことを要求します。…なぜだ?

1)Commander Juddとの駆け引きに必要だった

Baby Nicoleのことについては逐一Commander Juddに報告しています。だから、彼の信頼を得るために必要だったのか、と思いますが。でも、それまでにも十分信頼を勝ち取ってきたわけで、あえて危険を冒してまでBaby Nicoleを召喚する必要があったのだろうか、と。実際Commander JuddはBaby Nicoleと結婚するなんて言い出すわけだし、得られる利益に対してリスクが大きすぎないかと思いました。うーん、ちゃんと読めてない前半に、Baby Nicoleを必要とするほどAunt Lydiaの立場が悪くなっていた描写があったのだろうか。

2)Maydayの能力を測った/保護の最大化

情報を渡すことは当然Aunt Lydiaにとっては一大事で、命を懸けられるだけの相手なのか測る必要があったのかもしれません。Baby Nicoleを特定、保護できていて、首尾よくGileadに寄越すことができるくらいの能力があることを確かめたかったのかな?かつ、Maydayにとっても最重要アイコンであるBaby Nicoleを指定することで、彼女が生きてカナダに帰れる確率、大事な情報がきちんと渡る確率を少しでも上げたかったのでしょうか。

3)Agnesと出会わせたかった/Agnesを脱出させたかった

すごい性善説ですけどね…。だし、AgnesがAunt(Supplicant)にならずWifeになっていた可能性も少なからずあったわけで、その場合彼女を巻き込むことは不可能です。そういう目的があったとしても、必ずAgnesでなければいけなかったというわけではなかったはずです。立案時点での手駒を眺めたら候補として彼女が浮かび上がり、最後に少しの情を振りかけてAgnesに決めたということはあったかもしれません。

また、この計画においては同行するPearl GirlsがAunt Vidalaのような心からの信奉者であってはいけないので、Gileadの体制に疑問を持ちやすい人としてその血筋はよい要因だったのかもしれません。ついでにAgnesにも、生みの母親に会わせてあげたかった…というのはAunt Lydiaを褒めすぎですかね。

4)単純にBaby Nicoleに会ってみたかった

実はこれもあったんじゃないかという気がしています。意外とこういう単純な動機も大事にしそうなAunt Lydia。という個人的印象。

うーん、たぶん1が一番大きいんだろうけど、私はよく分かりませんでした、その重要性。

 

○Becka…(号泣)

いやもうね、Auntになった名前がImmortelleだった時点で嫌な予感はしていたのよ。フランス語で「不死の」「不朽の」っていう意味だし。Beckaが一番かわいそうだよ(T_T)

父親がCommanderではなかったことで学校でも差別的扱いを受け、その父親からは性暴力を受け、なんとかSupplicantになって一時は希望を持ったもののカナダへは行けず、水槽で一人死す、と。ああ…

Beckaが一番辛くて一番強くて一番優しいんですよね。選択肢なんてないように見える状況の中でも、できる限りのことをしようとする。最低な父親でも死なせてしまったことに責任を感じる。Agnesの状況が変わっても常に一番近くにいた。

私はAunt Lydiaが48時間と言ったのを真に受けて、とにかく48時間隠れてればいいんだと安直に思っていたのですが、よく考えれば結局死ぬかHandmaidになるかしかないよねという。カナダに行けない時点でそれがすぐ分かったはずなのに、絶対にあなたを助けると言うAgnesに付き合っておしゃべりしてあげるBecka尊すぎ。。優しすぎる人は生き延びられないのか…私は君が一番好きだよ!!!

 

○女同士の関係が尊い

いろんな種類の関係が登場するのがたいへんよきです。BeckaとAgnesの友情はもちろんだけど、Auntたちの権力関係、AgnesとNicoleが姉妹になっていく過程、Shunammite(なんて読むか分からんかった、シュナミット?)もなー、鬱陶しいけど悪い子じゃあないのよね…。BeckaとAgnesにしても順風満帆だったわけではなく、清く美しいだけじゃない、定型的じゃない関係が書かれていてとてもよかったです。いろんな劇を見ていてつくづく思うのですが、女性の立ち位置ってすごく限定的じゃないですか。誰かの淑たる妻(浮気することはある)か、下町の女か、娼婦か、王の母か、みたいな。Auntって男のsupervisorのもと女たちを統括する言うなれば時代劇の皇太后的な人たちだと思うんですが、ちょっと愉快なのは、皇太后があくまで息子=王を産んだ代償として得られた立場であるのに対して、AuntがAuntたるのは彼女らの能力の結果なのですよね。だからみんな、自分ベースで物事を考えられる。自分がいかに権力を得るか、自分がいかに立ち回るか、という(思えばチャングムの誓いの最高尚宮を巡るスラッカンでの権力争いはこれに近いところがあるかもしれません)。これは作者が本当にうまい、どこまでも女性に抑圧的なGileadにおいて女性たちの生き生きした関係を描いていてとても楽しく読みました。

 

○Dr.Grove...!

今作随一のクソ野郎。Commander Juddもクソ野郎なのですが、かなり気合いの入った異常者、pedophiliaなので、近くにいそうで怖いという意味でDr.Groveが一番です。

そしてね、Dr. Groveの犯罪を告発できない構造って、まんま#MeTooの世界だよね、と。加害者が男で社会的地位があるために、女の言うことなど一顧だにされないということをみんな分かっている。#MeTooが生まれただけ現実の世界はGileadよりいくらかマシだったらしいと思いつつ、日本におけるそれの結果を見るとくらーい気持ちになります。財務省の対応はまじで何回思い返してもクソだった。Gileadレベルだよ残念だな。

 

↓あと2つ書き足したいのですがいったんタイムオーバーなのでこれだけで。

 

○AuntとHandmaidの犯罪録はなかった

○聖書にひっかけてあるところは諦めた

合格通知から1年。

1年前の今日合格通知を受け取ったらしいと、はてなブログが教えてくれました。その日のエントリを読み直してみたら、もうすっかり忘却の彼方だった当時の気持ちが書いてあって、そっか、そんなに嬉しかったのか…となんだかしみじみしてしまいました。立ち位置が謎。

それによると留学を目指そうと決意したのは2018年の秋らしいので(さすがに言われたら思い出したけれどこれも忘れていた)、それから2年と少し、本当にここまで来たんだなあとこちらもしみじみ。9月から始まった秋学期も半分以上の授業は終了し、課題も八割がた片付け、クリスマス休暇が見えてきました。

秋学期やってみて一番驚いたのは、英語が全然分からなくてもなんとかなってしまうものなんだな、ということ。当初よりはましになったものの、いまだに授業は半分も理解できているか怪しいし、しゃべることにかけてはもう本当に最悪です。が、ある程度読めて書けさえすれば、クラスの半分より上のグレードをもらうこともできるみたいです。あ、留学ってそんな感じなんだ、と、これは完全に予想外でした。

嬉しかったのは、プレゼンをクラスメイトに褒めてもらえたこと。果たして言っていることが伝わるのかからものすごく心配で、もし質問があったらその内容を理解できるのだろうか、理解したところで答えられるのだろうか(英語力的な意味で)、というのも。もちろん内容自体も、なにを選んでどういうふうにまとめていけばいいのかも手探りでした。通常授業の予習の合間を縫って論文を読んだりニュースを調べたりして、話すことは文字通り一から十まで全部原稿を書いて読めばいいだけにして、パワポも作って。

迎えた当日、原稿を読み終わってスクリーンの共有を終えたら、拍手の絵文字がたくさん。本当に嬉しかったです。すぐ消えてしまったので、スクショを取っておけばよかったと思いました。個別にメッセージでI loved your presentation!と言ってくれた人も何人もいて。2つのプレゼンとも質問が上がったときは本当に緊張したのですが、最低限内容を理解することはできて、答えはしどろもどろになったものの先生に適当に収めていただきました。できないことは山のようにあるけど、頑張れば伝わるのだ、英語ができないから全部だめって思ってしまっていたけど、認めてもらえることもあるのだなあと。1つ目が終わったあとはなんだかほっとして泣きそうになってしまいました。笑

とはいえ、たっかい授業料を払っている以上授業にももっとちゃんと参加したいし、来年にはインターンをしなければいけないので、とにもかくにもこの残念な英語力をどうにかしないといけません。冬休みの間、とりあえずシャドーウィングを頑張ろうかと思うのですが、ほかになにかいい方法はあるのでしょうかね。

と、なんだかもう終わったようなテンションで認めていますが、まだリサーチペーパーが2本残っております。わはは。ちゃちゃっと片付けて早く冬休みを満喫したいものです…。

それでは、Bonne journée !

忘れられない「ありがとう」

なんの脈絡もなく、小説『オリガ・モリソヴナの反語法』の話をします。ええ、お察しの通り煮詰まっています。

米原万理さんといえばご存知の方も多いかもしれません。本当に名作なので本当に読んでほしい。小説を数本しか書かれずに早逝されたのがほんっとうに悔やまれます。私がこの本を知ったのは三宅香帆さんの『人生を狂わす名著50』で紹介されていたから。これをきっかけに『存在の耐えられない軽さ』『恋する伊勢物語』『人間の建設』などを読んだのですが、どれも絶対に外れませんでした。毎回こんないい本があったのかと新鮮に驚いたので、よければ、ぜひ。

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読んだのはもう何年も前なので細部は忘れているところもたくさんあるのですが、いまだに忘れられない、そのとき頭に浮かんだイメージがいつまでも残っている場面があります。ある女性がある男性に「ありがとう」と言うところです。

 

その男性はもうどうしようもないクソ野郎で、めちゃくちゃイライラします。あ、不倫とかそういう第三者にはあんまり関係ないねみたいなやつじゃないくて、なんというか本当に人間として全方位にクズってやつです。そしてそいつはその女性を決定的に辱めた、と吹聴してまわるのです。いかんせんクズなので、まわりはそれを疑うこともなく当然の事実としていました。でも、違った。なんでそんな心境に至ったのかは分からないけれども、実は彼は彼女の尊厳を守っていたということが分かるのです。それを表す場面が、彼女が彼に「ありがとう」と告げるところ。もしかしたらその事情が語られたのは「ありがとう」より後だったかもしれませんが…。

 

現実社会においては、善良な人間であることに越したことはないし、そんな「いいとこもあるんだけどね」みたいな野郎と付き合いたいとは特に思いません。だけど、この小説の中においては、そこだけは守っていたという事実によって人間というものの尊さとか愛おしさがくっきり浮かび上がってきたのです。繰り返しますが、基本はクズなんですよ。他の人の尊厳を傷つけるようなことも平気でやってきた奴です。なのに。

 

小説の力ってすごいなと思います。

私も最近お話もどきを書き始めたのですが、底辺も底辺なりになにかそういうものを描き出せるようになれたらいいなと思う今日この頃です。

はい、勉強に戻ります(まじでこんなことしてる場合じゃない)。

Confinement直前の風景

荷物の大きい人が多い、という印象です。Confinement(日本ではロックダウンと報道されているのでしょうか)前日の花の都パリ。

 

スーツケースを片手で引きながら大きなバックパックを担いで歩いている人を何人も見ました。実家に帰るのか、恋人の家に向かうのか、はたまた別のどこかなのか、分かりませんが。ほかにも、身長ほどもありそうな観葉植物の鉢を抱えている人、何に使うのかよく分からない長細い棒を小脇に抱えている人、など。

 

数日前からreconfinementになるのではないかという噂が流れ、昨夜のMacron 20hで正式発表。今夜、どの程度の制限になるのか詳細が知らされるそうです。そして今日の深夜からconfinement、と。

 

私はといえば、ずっと先送りにしていた日本に送らなければいけないものをやっとポストに投函し(届くのかね?)、アジア食品スーパーで開店前から並び、ユニクロで冬用のパジャマを買ってアルバイトをし、先ほど帰宅しました。飲食店のバイトなのですが、在庫処分でいろいろと食べ物をもらえてありがたかったです。ラッキー。

正直なところ授業は全部オンラインでこれまでもセルフコンフィヌモン状態だったので、そこまで変わる!という実感はありません。ただ、スーパーに買い物に行くにもなにかしらの書類を書かないといけない、というようなことになると面倒だなと思います。

 

月曜日だったかな?とても天気のいい日に、こんないい天気なのにどこへも行かないなんて!と突然思い立って美術館へ行ったことがありました。金曜日にしようかなと思っていたのですが、行っておいて本当によかったです。明日とか全然無理だったわ。ありがとうパリ、月曜日に晴れてくれて。

 

これから冬へ向かっていく季節、ただでさえ気が滅入るのに…と心配している人も多いようです。どんな感じになるのかは実際やってみないと分かりませんが、とりあえずは粛々と勉強しようと思います。もう木曜の夜なんて信じたくない。しかし容赦なく11月はやってくる。がんばります…。