Parce que c'est comme ça

欧州大学院生。最終目標はバカンスのある人生。パスクセコムサ。

NGT事件の謎。

山口真帆襲撃事件」だったらここまで長引かなかったでしょう。解決の手立てはあったでしょう。しかし本件はもはやNGT(=AKS、ひいては秋元系グループ、さらにひいてはアイドル界の)事件となってしまいました。

山口さんほか2名の脱退発表に衝撃を受けて書いた記事にてある通り、定期蒸し返し記事第一弾として思っていることをつらつら書いていこうと思います。

※なお、言うまでもないことですが、完全に私見ですし独自に(あるいはほかの人より深く)取材などはしていません。

 

謎1:AKSの驚くべき常識の欠如

事件が起こったあと公表しなかったことは、出る杭にバッシングが集中する日本社会の現状を踏まえまだ理解の余地があるのですが(といってもAKSは単にもみ消そうとしたのでしょうから動機は全く首肯できません)、そのほかの行為は1つを除き驚くほど常に非常識です。もはや伝説の3周年記念公演(通常の公演内容をやり切ったこと、言わずもがななぜか被害者だけがさせられる謝罪)、当時の責任者今村氏の徹底したかくれんぼ、ずさんな第三者委員会、「開いた」というアリバイ作りのためだけの記者会見、お粗末な公式発表、謎のチーム解体、そして最終的に山口さんら3名を追い出し「新生NGT」を始めようという意味不明の姿勢。

AKSのこれらの行動は(当初そう言い訳しようとしたように)事件そのものが誇張あるいは嘘だったときにだけある程度免罪されますが、山口さんにそうする動機もメリットも皆無なこと、警察も関与していること、そして第三者委員会()の報告書から、それはありえないことが火をみるより明らかです。

たとえ襲撃にほかのメンバーが一切関与していないとしても、未成年を含む若い女性を大勢預かる組織として到底許されることではありません。ただでさえセクハラや性暴力に遭いやすい若年女性を人として尊重する気も守る気もなく、ただ商売道具として思いのまま動いてくれたらそれでいいという意思しか見えてこないからです。そしてこれらのAKS社の行動は誰の目にも明らかな事実です。

争いの余地のない事実だけ並べ立てたって酌量の余地がありません。ほかにも山口さんの言ったように社長が加害者となじったり、週刊誌への山口さんを攻撃するような内容のリークをしたり、裏ではもっとひどいことがあっただろうことは想像に難くないです。これで「新生NGT」なんてどだい無理な話です。「#NGTを諦めない」というタグがありますが、それを言っている人たちは、山口さんらの苦しみを、残ったメンバーの安全を、なんだと思っているのでしょうか。

やっと「謎」の話に入りますが、ではなぜこんな非常識な行動を連発できるのでしょうか。理由の1つはやはり、AKBグループ全体の体質として、所属メンバーを一個人として尊重し保護するという姿勢に欠けていたとしか思えません。人を商売道具とするとき何を守らなければいけないのか、何が一番大切なのかが全く分かっていないから、峯岸さんの事件が起こったのでしょう。明らかに接待でひどいことをさせられている写真が流出したこともありました。恋愛スキャンダルと同じでただ黙って待っていればやり過ごせると思ってもいるかもしれません。そして、どっかの社長が書いたくだらない記事から察せられるとおり、これらは芸能界全体の雰囲気でもあるのでしょう。むしろAKSとしては所属する業界の「常識」に沿って処理したつもりだったのかもしれません。

でも、芸能界だって俳優の労働組合が話題になったり休業する人が相次ぐなか、意識も少しずつ変わってきているはずです。根本的には芸能界のせいではなくAKSの責任でしょう。

もう1つは、少し前にtogetterで話題になったSKE事業譲渡関係の株がらみについて、͡コトが大きくなると大損するという事情があったのかもしれません。いや、でも、これは山口さんの告発で隠しておくことができなくなった以上、それ以降は最善手を打つことが株価の下落を防ぐために必要だったでしょうから、違うかな。

 

謎2:やけに迅速で適切な「総選挙中止」

そしてもう1つ考えられるのが、この事件が総選挙の存在意義を根本から揺るがしかねないということです。それを隠すためにここまで不可解な行動を続けているならば、総選挙はAKB発展の命とも言えるものですから、分からなくはありません。

そう、上で書いたように非常識を積み重ねている中で、「総選挙中止」という判断だけが迅速で適切でした。逆に浮いています。さしものAKSもそれくらいの常識はあったのか、と思う人もいるかもしれませんが、3周年記念公演を厚顔無恥にやり切り握手会まで再開させてしまう彼らに、「総選挙なんかやってる場合じゃないな」なんていう判断ができたでしょうか??1年で一番稼ぐシングルを、そんなに簡単に放棄できますか??たしかに回数を重ねマンネリ化してきたなかで、止めどきを探していたというのはあったかもしれません。けれどもそれならそれで、「最後の総選挙」とでも銘打って盛大に締める(そしてハイパー集金する)くらいが自然ではないでしょうか。短い文章をネットにぺらっと載せる、そんな終わり方が本当に想定内だったのでしょうか?

ここから書くことは推測ですし私が考えたものでもありません。ネットではそう考えている人が少なからずおり、私も賛同するものです。

メンバーが特定の「ファン」となんらかの見返りを期待して私的な交際を持つということが行われていたのでしょう。そしてその期待した見返りはおそらく十分に返ってきた。その「見返り」は総選挙であり、リクアワであった。2つのイベントでのNGTの躍進は、やはり誰が見ても不思議なものでした。欅坂レベルに売れていればまだ分からなくもないですが、そんなこともなく。ものすごくお金持ちのファンがNGTについたのかなあと思っていましたが、それが見返りだったとしたら?そして。それに、運営側がなんらかの形で関与していたとしたら?

AKBグループは総選挙を通して大きくなってきました。ファンは時に生活を切り詰めてまで多額のお金を払ってきました。メンバーははっきりした数字の評価が突き付けられる、ファンに「お金を使ってください」と言わねばならないストレスと戦ってきました。それは、みなに一応「最低限のモラルは守られている」という暗黙の了解があって初めて成り立つものです。

それが崩れるとしたら。誰にとっても許容できないでしょう。すべてが幻だったなんて。

所詮ビジネス、信じるほうが悪いと思う人もいるかもしれませんが、運営側がガチと思わせたかったことは事実でしょうし、総選挙というイベントが生み出す苦しみの総量を考えれば、さすがに信義則違反でしょう。

この事件を掘り下げることが、あるいはまっとうに処分を下すことが、このパンドラの箱を開くことになるならば、とにかく山口さんらを追い出さねばならないという思考に至るのは分からなくはありません。

 

謎3:秋元康はいったいなんなの?

山口さんの発信にもありますからあまり攻撃できないところですが、僕もう関係ないからなんにも言えましぇ~んはありえないでしょう。これまで散々利益をむさぼってきておいて。たとえ今現在経営に関わっていないのだとしても、AKBというビジネススタイルを作り上げる過程において相当の役割を果たしていることは疑いなく、今回の事件はそのようなスタイルも発生の背景にあることを考えれば、逃げ続けている彼には本当に腹が立ちます。ふざけんな。

 

謎4:山口さんが名前を挙げた3人と他の差はなんだったのか

今回の事件で唯一救われる思いがしたのは、山口さんに寄り添えたメンバーがいたことでした。本人たちにとってはどちらに転んでも救いなどまだ見えていないでしょうから、部外者が勝手に救われたつもりになっているだけですが。

私は寄り添えなかったメンバーを責めるつもりはあまりありません。たぶん山口さんにもそんなにないのではないかと思います。最終公演で黒い羊だけを共演するその感覚の絶妙さに痺れました。積極的に責めはしないし一緒にステージに立ってもいいけれども、それならば自分たちがしてきたことはなんだったのか分かってもらう必要があるし、安易に仲良しごっこで許すこともしない。100点じゃないですか?

メンバーはみんなアイドル、芸能界に強烈な憧れと夢を抱き、いろんなものを犠牲にしながら頑張ってきたんでしょう。そして会社は山口さんこそ悪というメッセージを発信してくる。そんななかで、今まで積み上げてきたものを台無しにしても自分で善悪の判断をしなさいなんて、それは過大すぎる要求だと思います。まず変わらねばならないのは、責任を負うのは、AKSをはじめとした大人たちです。

けれども実際には、それができた人が3人いたわけです。何がこの3人と他を分けたのだろう。同じようなことを第二次世界大戦を勉強したときにも思いました。ナチスに命がけで抵抗したドイツ人と、まずいことをやっていると分かりながらも何もできなかったドイツ人、なにがこの両者を分けたのだろうかと。

これは直接今回の事件の解決に資する疑問ではありませんが、自分という人間を形成していくうえで、考え続けていきたいことです。

 

まとまりもなく長くなってしまいましたが。とりあえずここまで。