Parce que c'est comme ça

欧州大学院生。最終目標はバカンスのある人生。パスクセコムサ。

「人の命より大切なものがなにか分かりません。」

山口真帆さんがNGT48在籍中に受けた暴行事件についてのあれこれは、山口さんが常に最善の行動をし続け、運営会社AKSが常に考えうる限り(ときに常人の想像を超える)最悪の選択肢を選び続けるという点で、ひじょうに印象的だったのではないかと思います。

もちろん、彼女が受けた暴行事件それ自体が酷いものです。たとえ運営会社の事後対応が100%適切だったとしても、事件が起きてしまったこと=所属タレントを守れなかったことの責任は免れようがないし、彼女の傷が残り続けても全くおかしくありません。

それなのに。

最初に被害者だけに「謝罪」させた件から始まり、どう見たって運営会社が二次加害(というかもはや独立した加害者といっても差し支えないかもしれない)を重ねています。本当にあり得ない。

だけど、ではAKSだけが特別異常な会社なのか?と言われると、日本においては、そうではないんだと思います。思い出してください、財務省がセクハラの被害を受けた女性に対して出頭するよう求めたことを。財務大臣が「取材記者は男にすればいい」と言い放ったことを。悲しいけれど、そういう国なんだと思います。

原因は2つに収斂されるのではないでしょうか。おかしいと思っていても声をあげられないこと、組織内の価値観に依らない個人の判断基準を持たないこと。

 

おかしいと思っていても声をあげられないこと。

さすがにAKSの中に一人くらい、被害者に謝罪させるなんておかしい、被害者を追い出して明るい再出発などできないと分かっていた人がいるはずです。AKBの現役メンバーですら、おかしいと発信した人がいたのですから。女性蔑視の広告などにも通じることですが、そういう人が「それはおかしいですよ」と発信できる環境にないんです。勇気を出して発信したとしても、無視されるのでしょう。日本社会における「反対意見を述べることそれ自体が悪」という雰囲気は、やはり弊害が圧倒的に大きいと思います。

 

個人の判断基準を持たないこと。

きっと、AKSの内部、NGTの内部では、「ことを荒立てた山口さんに非がある」「異を唱える邪魔者がいなくなったからすっきり再出発できる」という雰囲気をトップが作ろうとしているのでしょう。10代の若者たちがそれに染まってしまいやすいということは分かります。HKTの「女の子は頭からっぽでいい」事件のときは、世間の常識的に見れば明らかにおかしいけれど、メンバーにとっては自分たちのこれまでの活動を否定することにもなりうるから、今認められなくてもある程度仕方ないだろうと思いました。

でも、山口さんが言った通り、これは「人の命」の問題なのです。殺されかけた被害者がいて、これからもまた被害が生まれるかもしれない、そんな事件なのです。最優先にされるべき被害者のケアを怠ったままで、ただでさえ性暴力やセクハラの被害者になりやすい若い女性を多く抱えた組織としてまともに活動しているわけがない。

NGTに合格するまでにいろいろたいへんな思いをして、やっとつかみ取ったアイドル活動を、手放したくない気持ちは分かります。安易にNGT以外にも道はあると言えないかもしれない。けれどもどうかアイドルである前に一人の人間である自分として、何を大切にすべきなのか、考えてみてほしいと願います。

 

 私はどちらも日本人、日本社会をダメにしているかなり深くて大きな問題だと思います。年齢を重ねた人でも、組織の価値観に捕らわれずおかしいことに気づき、自分より力を持っている人に異を唱えることはすごく難しい。それだけに、山口さんの聡明さ、勇敢さが際立ちます。そして正直なところ、とっても不思議です。なぜ彼女はそういう大人に成長できたのだろうかと。とんでもなく賢い人だというのは分かりますが。

 

もうNGTは解散するしかないでしょう。ほかの48グループ、46グループも、無関係ではいられない。黙殺し続けるなら、いずれ批判の目はそちらに向くことになります。私も、いつまでも蒸し返すつもりです。

山口真帆さん、長谷川玲奈さん、菅原りこさん、村雲颯香さんの今後が光につつまれたものになりますよう。